BOOK

□novel
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拒絶



愛しさに酔い
孤独に堕ちる


君へと真っ直ぐ伸びた
道に空いた深みへ嵌る


それはとても心地良くて


最大の恐怖だった




***********************



インフィニティという都市に着いて
最早3ヶ月の時間が過ぎた

この夜も、各々が床に就いたのは何時だろう。
疲労ばかりが募る



フロアには無造作に置かれた酒瓶。

そして目をソファーへ移すと
自らの食事とも言える人物

その紅は蒼を捕らえていて。


足元の酒瓶を
蹴飛ばしてみた

もちろん逆らう事もなく転がっていく。
そして音もなくその瓶が静止した。






「飲もうか、黒鋼」







最後の晩餐に



付き合って貰うよ



**********************



初めて酒を交わしたのは
桜都国の夜だった

飲むのは知っていた、ただ機会が無くて交えた事はなかっただけ。
あの夜は酔いに負けて、何を口走ったか覚えていない。
否、忘れようとしたのか

ただ初めての情事が
あの夜だったのは記憶にある。
それは笑えるほど不器用なものだったけれど、愛しさに溺れた。
きっと

その心の奧では嘲け笑う自分がいて


何故なら

君はオレが殺すのだと


そう片割れを殺した時に命令されたのだから。
それを認識するきっかけともなる情事に、更に酔いが回らないかと願うばかりで。

もう少し
少しなんだ

きっとこの線の向こう

酔いが覚めない向こう側は
あまりにも近いけれど
抱えきれぬ禁忌に潰されそうで

手を伸ばせなかった


**********




「っ、…ふ」



「…辛いのか」



何を今更
鼻で笑おうとしたけれど
突然奥を突かれ阻まれた。

手を回したかったけれど
自分の何かが拒んでいる

桜都国の夜みたいには
いかない関係を押さえ
シーツを握る手に力を込めた。





「黒…が、ね…オレは君を…っ」




力を込め耳元に顔を近づける

吐く息は不安定だけれど、自分がこの後に綴った言葉は確実に伝わっただろう。

自分は
何を血迷っているのだろう


発した言葉を聞き取り君は
泣きそうな眼で
愛の言葉を言った。





酔いは終わり
晩餐を終えよう
自ら断ち切る
感情の一部を

この快楽も
この恐怖も
捨て去ろうと


******************



めのまえのあなたが
きえてしまうんじゃ
ないかって。
それはもう
ことばにならないほど
おそろしいとおもった

つのる、つのる
おもいばかり

いとしいなんて
しらなければよかった




fin




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