BOOK
□novel
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バレンタイン
*バレンタイン漫画続編
あらすじ…バレンタインプレゼントに何故か黒鋼の苦手な牛乳をプレゼントしたファイ。文句を言おうにもサクラに邪魔され何も言えず…。
続きです。
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第一部
誰でもその日は
愛しい人からの贈り物を期待する
形が残る物にせよ、形無い物にせよ
何かしらの態度を
期待してしまうそんな一日。
黒鋼もその中の一人であって、優しい恋人からのプレゼントを期待していたものの、何の冗談だか牛乳を手渡される始末。
正直憤りを感じずには居られない。何のつもりか解らない恋人はやたらと邪魔をする五月蝿い姫とどこかへ消えて、今この大切な日に部屋で一人っきり。
「はぁ」
情けない溜め息を着いて不貞寝するようにベットに横になった。静かな部屋に体重が掛かりベットが軋む音が虚しく響く。
するとドアの先から、コンコンとノックする音がして視線を移す。どうも無気力のせいで身体を起こしたく無い。
そのまま無視していると徐々に強くなるドアへの衝撃に怒りを感じ始めわざと思いっきりドアと開けてやった。
「ハッピーバレンタイン!!」
開かれた先から勢いを着けて黒鋼に飛びつく。突然で支えきれなかった体は其の侭後ろへと鈍い音を立てて倒れた。
ちゃっかり上に跨っているのは、怒りの現況である―ファイ
「っう―…何やってんだ…」
「いじけてる黒ぷいにプレゼントを持って来ましたv」
そう言ってふら付いた視線を戻しファイに向き直ると、ニコニコ悪気も無い顔で自分を見つめていて。更に情けなくなってまた溜め息が零れた。
「いじけるわけねぇだろ…」
「えー?だって顔に書いてるもん」
そう言うとファイは黒鋼の頬を突付き、ぐるっと円を描く。
最早呆れて声すら出ない黒鋼がファイを退けて立とうとした。しかしファイがそれを許さず、思い切り黒鋼を抱き締める。
「おい、いい加減に―…」
「牛乳、開けてみてよ」
抱き締められたまま、耳元で呟かれる。意味も解らずにいると、ファイがスッと顔を離して向き直る。
「オレがあげた牛乳、開けてみて?」
ヘラい顔とは別の、少し照れた上目使いで見上げられると、言葉も詰まる。黙って懐に入れておいた牛乳を取り出す。
この味を思い出すだけで吐き気がしたが、じっと自分の行動を見詰める恋人が眼の前にいるのだからしぶしぶその瓶の蓋を開いた。
想像していた、あの嫌な香りが全く無い。というよりも、無臭で液体すらも中には入っていない。
その瓶の底を見ると、ただ一枚の紙切れが入っていた。
瓶を逆様にして紙を取り出す。
そこに書かれていたのは
「…それが、プレゼントだよ」
「…馬鹿、もう貰ってるじゃねえか」
そこに書かれていたのは
いつか黒鋼が教えた、日本国の文字で記されていた。それは上手とは言えないけれど、一番欲しい物の名前が確かに書かれていた。
『ファイ・D・フローライト』
「改めて貰ったからには…責任持たねぇとな」
そう言って、柄にも無く照れているファイの頭に手を回し、そのまま深く口付けた。
まるでそのキスはその身体に"離さない"と刻むような、深く、そしてお菓子よりも甘いキスだった。
そんな事をしている間。
開けっ放しのドアからこっそり様子を覗き見していた姫と白饅頭がいた事は本人達のみ知る。
END
バレンタイン続き(激裏注意)
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