捧げ物

□何れ菖蒲か杜若
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「―――あぁ、今日は早いんですね」

『逢いたかったよ、骸…』

「くふふ…嬉しいことを言って下さいますね、僕も逢いたかったですよ綱吉くん…」


そういって優しい手付きで綱吉の髪を撫でる

ここは綱吉の夢の中

六道輪廻

その六道骸はその能力を使って綱吉の夢に現れる


「今は授業中のはずでは?」

『そんなのどうだっていいよ、骸に逢いたかったから…さ』

「……嬉しいですね、本当に」


そんなことを言ってくださるなんて


そう呟いて微笑む

この笑顔を見ると自然と心が安らいで笑顔になる

最近、笑っていない気がする

夢の中だけでしか、笑えない


「全身筋肉痛は治ったようですね」

『うん、なんとか』

「綱吉くんには少しだけ感謝してるんですよ」

『え……?』

「僕はマフィアを恨んでいます、それは今でも変わりません」

『……骸』

「ですが、君みたいなマフィアなら信じてもいいのではないかって思えるようになったんです」


骸のどす黒いオーラを浄化して、綱吉は勝利を収めた

そのおかげで今こうして綱吉の夢の中に現れても綱吉の身体を乗っ取ろうなどとは思わない


「何れまた、現実の世界で逢える日が必ず来ます…僕はそれを信じて君を待ちますよ」

『ホントに…?ホントにまた逢える??』

「くふ…心配ですか?」

『だって……』


悲しそうに、呟く

その姿が可愛いと思う


「―――…絶対に、また逢いに行きます ですから待っていてください」

『…約束だよ?』

「えぇ、約束です」


そう言って小指を絡める

暖かい

これは現実ではないのだけれど…二人にとってここが現実

二人だけの、世界


「あぁ、そろそろ心配した彼方のお友達が迎えに来ますよ」

『え…』

「ではまた…今度は現実でお逢いできることを祈って」


そこで、世界が砕けた


「ツナ…?」

「やま、もと……」

「こんなところでサボりかー?探したぜ」


屋上の扉のすぐ隣

そこに背を預けて眠っていた綱吉に山本武が声をかける


「…ねぇ山本」

「なんだー?」

「また、逢えるかな」

「……逢えるんじゃ、ねぇか…?」


誰にとは聞かない

多分知っているんだ


「…うん、逢えるよね…絶対」


その呟きは、現実になる


  
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