Viaggio di ora

□Viaggio di ora W
1ページ/2ページ





もう、二度と逢うことの叶わなかった人物

最期に逢ったのはあの、深い深い夢の中

でも、あのときの姿よりも若干幼い

一体、どうしてこの時代に

雲が、いるのだろうか―――





=== Viaggio di ora === W ===





ばさ、っと…骸は持っていたコンビニ袋を床に落とす

信じられない

だって、目の前に居るのは

遠い昔に失ったはずの、愛してやまなかった人物


「え、骸…今なんて…」

「Nuvola...か、やっぱりな」

「な、何なんだよ…その、ぬーぼら?って」


イタリア人の二人に対し、多少イタリアの血は継いでるものの、日本語しか分からない綱吉には何のことかさっぱりだ

呟いた骸は、信じられなさそうに、ただ雲を見つめる

呼ばれた雲も、骸の事を見つめ返す

この状況をいまいち把握できなかった綱吉は首を傾けるばかりだ

しかし、そこでやっと雲が口を開いた


「...Nebbia?」

「!」

「ねびあ?」

「本当にお前はダメツナだな」

「う…外国語なんて分かるわけ無いだろ」


恥ずかしそうに頬を染める綱吉と呆れた様子のリボーン

そんな二人をよそに、骸は雲にゆっくりと近づいた


「まさか…何故、あなたがこの時代に……?」

「?」

『あぁ…すみません、最近はこちらの言葉を使わないので…』


急に聞きなれない言葉を話し出した骸に、綱吉は目を見張る

イタリアにいたのだ、イタリア語が話せて当然なのだけれど

誰かに向かって、イタリア語で話しているのを見るのは初めてだった

壊れ物を扱うかのように、骸は雲の頬に手を添える

今にも、泣き出しそうな顔をして…


『本当に…霧、なの?』

『正確には、転生して違う人間として生まれた僕ですけれど…』

『転生…、?』

『でも…何故、あなたがここに…』

『さっき、雷の研究した…10年バズーカっていうのが…』

『―――…なるほど、あのときの…』


それには、記憶がある

ならば、この時代とあの時代は繋がっている

他のパラレルワールドに行かなかっただけ運が良いのかもしれない

つい先日、綱吉たちが体験したというパラレルワールドの情報

それを考えたら、別の世界に行っていたという可能性だってある

けれど、雲はこの世界に来た


「あなたが、無事で…良かったです」

「Nebbia...?」


雲を腕の中に収める

力の限り、でも優しく抱きしめる

日本語で呟いたから、雲には分からない

骸の様子を見て、なんとなく状況を理解する


――そうだ、骸は初代の時代から…


「て、ことは…ぬーぼら、っていうのは」

「イタリア語で、“雲”って意味だぞ」

「じゃぁ、ねびあ、って…“霧”?」


骸の背中と、骸の肩口から顔をのぞかせている雲の姿

何故だろう、骸が泣いているように見えた

でも、多分涙は流しては居ないだろう

プライドだけは、高いから


「…骸?」

「っ、あ、あぁ綱吉くん…すみません、ですがこの状況は予想外で…」

「その人、雲さん、でしょ?」

「…えぇ、紹介します…ボンゴレファミリーができるきっかけでもあり、
たくさんのものに愛され守られ、そして…
初代ボンゴレ…ジョットに最も愛された人物…それが、雲です」


やっと雲を開放して、横に腰を落ちつける

雲は雲で、まだ状況が理解できていない

骸の話す日本語は、雲からすれば未知の言葉

何度も首を傾げては、骸と綱吉を交互に見ていた

その様子を、綱吉の隣でリボーンが見ている


「ボンゴレが、できる…きっかけ?」

「これは、僕が話すには荷が重過ぎます…それは君が正式に10代目になったときに調べてみると良いでしょうね」

「だからオレは…マフィアのボスになんて…」

「...Nebbia」


服の裾をちょん、と握って引っ張る

状況を理解できずに、骸を見上げた


『あぁ、すみません…あなたにも紹介しなければなりませんね…』

『この人、ジョットにすごく似てる…』


骸の腕にしがみつくようにしながら、綱吉を見る

ジョットに似ている

でも、違う

それだけは分かる


『……この人はボンゴレ10代目…沢田綱吉です』

『ボンゴレの…10代目?』

『そうです…雲や、僕がプリーモの霧だった時代から…もう随分とあとの世界です』


ボンゴレの、10代目

沢田綱吉

つまり、それは…

ジョットの、子孫


『ジョットは…子どもを作ったの?』

『…その、ようですね』

『…僕は、ジョットの傍に…いれなかったの?』


その言葉に、骸は息を呑む

雲にとっては、これから起こる未来

だが、骸にとってはもう取り返しの付かない過去

ここで言ってしまっても良い

でも、それだとパラレルワールドが発生して、雲は元の時代に戻れなくなる可能性がある

戻れたとしても、その後の未来が変わってしまう

それだけは、避けなければならない

今にも、泣き出しそうな雲を、刺激しないように言葉を選ぶ


『っ違います…、プリーモは、あなたを守るために…っ』

『でも…でも…、僕、ちゃんと戻れるの?』

『え…』

『だって、ここは何十年もあとの世界なんでしょう?
本当なら、10年後に飛ばされるって雷が言ってたよ?』

『大丈夫です…ちゃんとあなたは、あの時代に戻ってきました…その場にいた僕が言うんですから信じてください』

『―――…そ、っか…』


雲を、守るために選んだ道

それが、雲にとって過酷な道であったとしても……


「なんか、よくわかんないけど…さ」

「?」

「とりあえず、恭弥さんは…プリーモの時代に、飛んでるってことだよ、ね?」

「―――えぇ、そうです…たしかにあの時代、雲の変わりに現れた少年はヒバリと名乗っていました」

「骸には、その記憶があるの?」

「断片的に、ですけれど…」

「そう…なんだ、複雑…だね?」

「クフフ…そうですね」

「?」


日本語がわからない雲は、日本語が出ると首を傾げてばかりだ

さて、これからどうしたものか

日本語のわからない雲と

イタリア語のわからない綱吉

このふたりを一緒にいさせても、会話どころか日常生活を送ることも困難だろう

いくらリボーンが居るといえども…


「で、この入れ替わってる時間ってのは大体どれくらいだったんだ?」


今まで黙って雲を見つめていたリボーンが骸に問いかける

それは綱吉も気になっていたことで、リボーンを見た後に骸に視線を向けた


「僕も、はっきりとおぼえているわけではありませんが…2,3日ほどかかったと思います」

「2,3日…」

「本当にはっきりしねぇな」

「断片的にしか覚えていないと言ったでしょう…現に、彼を見るまで忘れていたんですから…」

「…?」


じっ、と骸の隣から動こうとしない

人見知りが激しいのだろう

それにしても…


「ねぇ、雲さんっていくつ?」

「たしか…14,5だったと思いますけど」

「お、同い年?!」

「それにしちゃぁ少し、子どもすぎねぇか?」


言われて、骸は雲を見る

不思議そうに首を傾げている雲の姿

確かに、今からすればものすごく幼く感じる

でも、身体が弱くずっと屋敷に閉じこもってばかりいたのだ

成長するにもできなかった時代


「まぁ、仕方ないとでも、言っておきましょう」

「?」

「そんなことより、これからの事を考えなければなりませんね…ね、Nuvola?」

「?」


雲の頭を撫でる

昔では、考えられない行動

頭を撫でてくれたのは、雲のほうだったから―――




>>>Seguace...
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ