少年陰陽師
□桜舞う季節
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上空から桃色の花びらが数枚、音もなく舞い落ちる。
桜木の幹に片方だけあぐらをかいて寄りかかり、それを眺る。
昨日とはうって変わって、眩しいほどの雲ひとつない空が広がっている。まさに花見日和。
「春なんだねぇ」
「そうだなぁ」
物の怪も昌浩の隣に座って、上空を見上げた。
「彰子も連れてくれば良かったんじゃねえの?」
「ん〜…そうだよね」
「なんだ、昌浩?もしかして、俺と二人っきりの方が良かったのか?…ほぅ」
「それはない」
間髪入れずに昌浩は返して、左右に手を振った。
「そうかよ…」
いじける物の怪を、ちらとみやる。
「もっくんさ。また、行こうよ。彰子を誘ってさ」
「そうだな」
「じゃあ帰ろうか」
そういって立ち上がり、物の怪を自分の肩に乗せた。そういえば、彰子と花見なんて行ったことなどなかった。
桜を見て喜ぶ彰子を想像して、昌浩は無意識に微笑んだ。
「な〜に笑ってんだ?」
「…別に何でもないよ」
「あっやしいなぁ」
fin.