少年陰陽師

□理由(わけ)
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「そんなとこで座って何してるのよ」
「特に何も」

廊下に座り、空を仰いでいると太陰が訊いてきた。
目線をはずさずに答えると、たいして面白くなさそうに太陰も天を眺める。

「我に用があるのか?」

訝しんで眉をひそめていると、体陰は隣に座ってきた。

「別に用って訳じゃないけど、あの事で落ち込んでいるのかと思った」
「何だあの事とは?」
「玄武が空き家を壊しちゃった、あれ」
「なっ何を言っているのだ壊したのはお前だろう!」

何故我のせいにする…。

玄武は心中でそう呟き、短息を吐く。











晴明に頼まれ、玄武は妖を退治することになった。
だが問題があった。
攻撃する力を持っていない。有るのは結界を張ること。

「晴明、分かっておるのか?我は…」
「だから太陰もつけた」

玄武を遮り、飄々と笑う。

「我ではなく昌浩でもよいでは?」
「あれは今回は休ませてあげたいと思ってな」
「なら他の十二神将を」
「私とじゃ嫌な訳?」

いつの間にか顕現していた太陰は、腰に手を当て玄武を睨む。

「そういう訳ではないが…」
「では決まりだな。場所は右京の西のはずれだ」

晴明は子供のなりをした十二神将の二人の頭をぽん、と叩き微笑んだ。












夜。
辺りは暗闇に包まれ、徒人はもう寝静まった頃だろう。

「晴明は本当に分かっておるのだろうか…」

玄武は溜め息混じりに呟いた。太陰との行動が嫌なわけではない。
ただ、自分は足手まといではないかと思う。
晴明から妖退治を頼まれてから、その事だけ考えていた。

「なにぶつぶつ言っていんのよ」

横にいる太陰をちらと見、何でもない、と呟いた。

「あっそう。んじゃ行くわよ。あれ何処へだっけ?」
「右京の西のはずれ」

間髪入れずに玄武は答えた。
大丈夫なのだろうか、太陰となど。
新たな不安が沸き上がる。

「し、知ってるわよ。玄武が分かっているのか試したのよ」

そういった後、両手の拳を握り締め、眉を寄せた。

「行くわよ!」

こほんと咳払いし太陰は、風を起こした。そして、玄武と自分をそれに押し込み、宙に浮かばせる。
景色がぐるぐると回る。
太陰の使う風流は荒っぽく、目が回る。
少し経ち、右京の外れの小路に着いた。

「今思ったんだが、風流を使わなくとも神足でもよかったんではないか?」
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