D.Gray-man

□雨は止まず
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朝から雨が降り続いている。
雨粒が固いアスファルトに落ちて、水溜まりを作る。
繰り返し、繰り返し雨粒がその水溜まりに落ち波紋を作り出していく。
そんな変わらない風景を眺めやり、ラビは傘も差さずに歩みを進める。
傘を差さないのは、特にこれといった意味など無い。
ラビはずぶ濡れになりながら道を歩く。
髪が雨の性でぴたり、と顔に張りついた。
バンダナを取り、鬱陶しそうに髪をかきあげる。

「…何やってんだお前」

不機嫌そうな声。ラビは自分に声がかけられている事に気づく。
後ろを顧(かえり)みた。透明傘を差した神田がそこにいる。
別にとラビは返し、ただとラビは繋げる。

「何となく…」
「…あぁそうかよ」

神田の呆れた声音。

「これから任務なのに、足引っ張るなよ!」

吐き捨て、先に行くと言いながら早足でラビを追い抜く。
そして突然振り返り、傘をたたんだかと思うとラビにそれを投げた。

「うぉあぁ…何すんさ!」

危なげに傘を受け取り、眉を顰(ひそ)める。

「やる」

神田の短い一言に目を見開く。
思い掛けない言葉に驚いている間に、神田はすたすたと先に進んでいく。
今更差したところでと思ったが、傘を広げた。

「ユウ、ありがとな」
「俺のファーストネーム口にすんじゃねぇ」

言ったとたん、神田は凄みのある表情で睨まれた。
あっはは…とラビは苦笑する。
ラビはまた歩き始めた神田の背を見、自分もそれに続いた。



fin.
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