少年陰陽師

□ある日の出来事
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「に…、に、煮豆食っべたいな。なんて、ははは」

やっと言葉に出来たと思ったら全く自分でも予想してなかった言葉が口から出た。

「分かったわ。今度作るわね」

そんな昌浩の心境を知らない彰子は、微笑を浮かべる。
その笑顔が胸に突き刺さる。

「何やってんだろ俺」

彰子が行ってしまった後、はぁと重い溜め息を吐いた。










___

自室に戻った昌浩は、物の怪に先ほどの事を話した。

「ぶっはは。煮豆って、それはないだろ」
「もっくんに言われなくても自分でもそう思ったさ…」
「そんなしょげるな。次あるだろ?違うか?」

うつ向いていると物の怪は優しく問いかけて、ぽんぽんと昌浩の肩を叩く。

「もっくん。笑った顔で言うな」
「だって、煮豆って。ぶぶっ」
「くそう…」

今に見てろと物の怪を睨む。

「昌浩、ちょっといいかしら。渡したい物があるんだけど」

ばつが悪そうな声が妻戸の前から聞こえる。
はっとなり、昌浩は顔を上た。彰子だ。

「ど、しよ」

唐突の彰子の訪問で慌てる昌浩。

「入っていいぞ」

心の準備など持ち合わせなど無く、待ってと言う前に物の怪は了解してしまった。
無情にも、妻戸が開けられた。
昌浩の自室に入った途端に彰子は掌を合わる。

「ごめんね昌浩」
「…は?」

謝られてる理由が分からず、昌浩は混乱する。
昌浩の心の中をみすかすしたかの用に彰子ははいっと、何かをを渡した。
それを昌浩は見て愕然。

「匂い袋、彰子持ってたんだ」
「昌浩の部屋にあってほつれてたし、紐切れてたから勝手に直しちゃったの」
「えっ!そうなの」
「あ〜らら、こらら」

ちらっと横を見ると、そういいながら左右に揺れる物の怪が見えた。

「なんか、ごめん彰子。俺、彰子に貰った匂い袋ちゃんと大事にしとけば紐切れることになんなかったのに」
「ううん。あのね昌浩、紐が切れちゃったってことは大事に扱ってるってことでしょう?昌浩は悪くない。逆に、紐が切れるまで持っていてくれて嬉しいわ」

言い終わった後、彰子は微笑んだ。
昌浩もつられて笑ってしまった。

「ったく、暑いねぇ。あ〜。お邪魔むしは退散すっかなぁ」

物の怪は妻戸を開け、出るとぱたんとそれを閉めた。
何気なく、物の怪は冬空を仰いでみる。曇っていた空が青く澄みきっていた。




fin.
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