捧げ物部屋
□残された時間『#』
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少しばかり重たい、昇降口の鉄扉。
それをキィッと押してやれば、そこからは夕の光が溢れるばかり。
『残された時間』
「おーい、ここは立ち入り禁止なはずですよー」
鉄扉が大きな音を立てて締まると同時、上から間の抜けた声が降ってきた。
少しばかり飛び跳ねた心臓に声を漏らしそうになるも、どうにかそれを抑える。
土方は足を止め、そして昇降口に沿うように立っている貯水タンクの上を見上げた。
するとそこには、少し跳ねた髪が印象的のシルエットが一つ。
「……何だ、銀八かよ」
ったく、驚かせるんじゃねぇよ。
そう土方が吐き出すと、へらへらと笑いながら銀八は貯水タンクの上から下りてきた。
いつもとほとんど同じ。
眼鏡は外しているものの、くたびれた白衣を揺らして、とことこと歩いてくる。
その様子に土方は笑みが漏れそうになるのをどうにか堪えると、頭をがしがしと掻いた。
何でコイツは、いつもそんな調子なんだよ。
正直、調子が狂う。