捧げ物部屋
□箒星
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「銀ちゃーん。早くしないと置いていくアルよー?」
「あーあー、どうぞ置いていってくれ」
「本当にいいんですか? だって銀さん、前から楽しみにしていたじゃないですか」
「あー? 別にどこでだって見られるだろ、そんなモン。つーか毎日出ているじゃねぇか」
いーから、早く行ってこい。
ソファに寝そべったまま後ろ手に手を振ると、背後から扉が閉まる音が聞こえてきた。
神楽と新八が出て行ったのをチラと確認し、それからはぁっと息を吐き出す。
ここ最近、江戸では彗星の話で持ちきりだった。
何という名前かは忘れたけれど、ン百年ぶりの観測らしい。
別に彗星なんざみんなその程度の周期だろうと思うものの、さすがは人間か。
やっぱりそうそう見られないものだ。興味の一つも湧くらしい。
最初ばかりは銀時も「すげーな、すげーな!」と言ってはいたが、こうも連日だとさすがに飽きる。
そして今日がその彗星が最も大きく見える日だというのだが……。