短編

□僕だけのものに…
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虚園に着くとすぐに日番谷は藍染の元へと通された。
彼のすぐ隣には市丸が居る。

殺気石で腕を拘束され、ただただ日番谷は藍染の前に立つことしか出来なかった。



「やぁ日番谷くん、何時ぞやの怪我の方はもう完治したかな?」

不適に微笑む藍染に問われ、日番谷は眉間に皺を刻んだ。
そんな忌々しい記憶を加害者本人に呼び起こされたくなどない。
プライドの高い日番谷は藍染を睨みつける。
しかし藍染は微笑んだままだ。

「まぁいい。君と話したいことも有るのだが…とりあえず君はギンと共に部屋へ行きなさい」

やんわりとした命令に首を縦にも横にも振ることができず、日番谷は藍染から目を逸らそうと市丸の方を向いた。
すると彼は少しばかり驚いた顔で藍染を見つめている。
それに疑問を感じつつ、次の瞬間には市丸に腕を引かれ彼の部屋へと連れて行かれた。








部屋に着くなり、市丸は扉から一番離れた場所に日番谷を括り付けた。
そこはちょうど廊下から部屋の中を覗いた時に死角になる場所。

霊圧を殺がれた日番谷をそこに拘束するのは、市丸なりの理由があった。



藍染に日番谷をここへ連れて来いと命令を受けた瞬間、市丸は何をどう感じていいのかわからなくなっていた。

かつては散々恋焦がれ、けれども目的の為に一度手に入れることを諦めた最愛の人。
その人との再会を許されたのだ。

しかし藍染がわざわざそんな命を出す理由なんて容易に想像出来る。
日番谷と最も仲良くしていた隊長である藍染なら自分と同じ思いを日番谷へ抱きうるだろう。
そうでなくてもこの虚ばかりの退屈とも言える世界では、何か人間による刺激が欲しくなる。

自らの手で陵辱するのか。
それとも他の者に日番谷を抱かせて自分はそれを見て楽しむのか―――


どちらにせよ市丸は、他の者に日番谷へ触れて欲しくはなかった。
もう喜ぶべきか嘆くべきかもわからない。

その思いは今この状況でも変わらない。
むしろ日番谷からすればわけのわからない市丸の独占力は、更に強いものとなっているかもしれない。




バシンッ。


「いたっ…」


市丸が日番谷の頬を思い切り張った。


*
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