偲遊記
□第四ノ刻 忍び寄る影 (前編)
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「はい。じゃあお願いします。」
料理店の予約を取り終わり、
表に出た悟浄は辺りをキョロキョロと見回すトリを見つけた。
「トリーっ!!こっちこっち!!」
大きく手を振り、
まだ気づかぬトリの注意を引こうと、
悟浄は声を張り上げる。
「・・・。」
悟浄に気づき、
トリがゆっくりと近づいてくるが、
ふと悟浄は此処で重大な事に気づいた。
「俺・・・トリと話でけねぇじゃん・・・。」
「おせーよ・・・。」
“ゴーン”と効果音のなりそうな勢いでショックを受けると同時に、
聞き覚えのある声が突っ込みを入れる。
「悟空っ!?」
呆れ顔で悟浄の背後に立つのは先刻別れたばかりの悟空だった。
「・・・。」
「おう。案外お師匠さんの傷も深くなかったし、
宿のねぇちゃんも頑張って部屋探してくれたからな。」
いつの間にか三蔵と手をつなぎ、
悟空と三蔵の二人の間に溶け込んでいるトリに悟空は驚きもせず、
飄々と答える。
「それより八戒の姿が見えないようですが・・・。」
三蔵の言葉に突然悟空が現れたことでフリーズしていた悟浄がハッとする。
“内緒ですよ”
と言われていたのに、
それの言い訳を考えていなかったのだ。
「え、えぇ〜・・・と・・・」
しどろもどろになって焦る悟浄に背後からかけられた声はほぼ同時だった。
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