偲遊記

□第二の刻 大地の子と蒼天の少女
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 悟空が寺にきて早3日。

己のことを何も語らない悟空に、
三蔵は何も言わなかった。

悟空もそんな三蔵にほんの少し心を開きつつある。

 そんなある時、事件はおきた。




 + + + +


「三蔵ぉ〜う。 なんか聞こえねぇ?」

 日々書類に追われる三蔵の唯一の休憩時間。
兼、悟空との散歩の時間に、
ぽつりと悟空が隣で睡蓮を見ている三蔵に訪ねた。

「え? う〜ん・・・何も聞こえませんが?」

聞こえるのは睡蓮の花の浮かぶ池の水音と、
近くで囀る小鳥の歌声だけ。

三蔵は小首をかしげる。

「えぇー? 俺には聞こえるよ?
“連れてって”って。」

 悟空のその言葉に、
穏やかに睡蓮を見ていた三蔵は、
驚きで目を見開いた。

「そ、それはどこから聞こえるのです?!」

赤子が母親にすがるように三蔵は悟空の服の裾を掴む。

「んー・・・“空”?」

三蔵の行動を何の気にもせず、
悟空は答えると同時に空を仰ぎ見た。

空は晴天。

真っ白な雲が弧を描くように渦巻いている。




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