偲遊記

□第二の刻 大地の子と蒼天の少女
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「(・・・かないで。 行かないで。
   置いていかないで・・・。
    連 れ て っ て ! !)」


 一段と声が大きくなったかと思うと、
同時に空気がガラス細工のように一人の少女を浮かび上がらせた。

透明で、向こう側の風景が透けて見える。

ガラスでできたような少女。


「“ごめん―・・・”。」


無意識の内に悟空の口から零れ落ちた謝罪。

とたんに少女が色付き、悟空の腕の中に倒れ込んだ。




 + + + +


 少女が目覚めたのは次の日の昼刻だった。

真っ黒な髪に、真っ白な肌。

それと対照的な真っ赤な唇。

そして、悟空の金眼と同等、
見ることのできない蒼眼。

少女はその綺麗な蒼眼を見開くこともなく、
見慣れぬ天井を見つめた。

「お、目ぇ覚めた?」

少女の視界と聴覚に突然入り込んだ金眼の猿。

「・・・。」

しかし少女は何も答えず、
静かに上体を起こした。

「俺は悟空。 お前は?」

しゃべらない少女を特に気にすることなく、
悟空は少女に問う。

が、少女は悟空の綺麗な金眼を見つめるだけで、
何も答えない。

静寂だけが部屋に残る・・・・かに思われた。

意外にも静寂は長くは続かず、
静寂を壊したのは、
再び発っせられた悟空の声だった。







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