2周年企画

□久
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最後に彼に会ったのはいつだったろう。

私の彼は、日本人なら誰でも知っている、芸能人。

ちょっと前までは、そんなんじゃなかったのに。

見向きもされない、普通のかっこいい人だったのに。

ファンの子を見ていると、『有名になったから好きになったんでしょ』って、思う。

同時にそんな風に考える自分が嫌になる。

彼は芸能人。だから、忙しい。だから、滅多に会えない。

彼が今の仕事が大好きなのは見ていてわかるし、何より、迷惑をかけたくない。

だから、私は自分から連絡しなかった。


でも今日は…

辛かった。

会いたかった。

でも、迷惑をかけたくない。


「ほんとは、会いたいよ…」

ベッドに入ってふと、そんな言葉がこぼれた。

彼は知ってるのかな。この気持ち。

夜は、長かった。



朝、起きて驚いた。

隣に彼がいて、その手は私に回されていた。

「ん…」

何で、と思っていると彼が起きた。

「あ、ごめん、起こしちゃった?」

「いや、もう目覚めてたから。」

「そっか。」

「…ねぇ。」

彼が腕を外して起き上がったので私もそれにならう。
「なあに?」

いきなり彼は私を抱きしめた。

「俺のせいだろ、泣いてたの。」

「私泣いたっけ?」

彼の前で泣いた記憶がない。

「来てみたら泣いてた。
…ごめん、ずっと我慢させて。」

「え…」

「ちゃんと知ってるつもり。お前の事。
お願い、寂しかったら言って。
辛かったら俺の前で泣いて。
すぐには無理かもしんないけど会いに来るから。」

涙がこぼれた。

彼の腕の力が強くなった。


嘆きつつひとり寝る夜の明くる間は 
いかに久しきものとかは知る


(あなたは知っていたんだね)

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