2周年企画

□忍
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あたしには10年片思いをしている幼なじみがいる。

関係が壊れるのが怖くて、自分からは言えなかった。

で、怯えてたら彼は遠くなっちゃった。

放課後。
「俺、好きな人が出来たんだ。」
私の気持ちはを彼は知らないから、明るい笑顔で言う。

あたしのどこかで、ズキンと痛みが走った。

でも、誤魔化した。

「へぇ!あんたにもやっと春が来たんだね!」

「失礼な!これでも一応モテるんだぞ!」

「それ自分で言うか。」

「ナイスツッコミ!」

「意味わかんないし。」

今のあたしは上手く笑えてるだろうか。

「告白…どうしようかなぁ…」

「…まず、あたしから離れなきゃね。
あたしなんかと喋ってたら付き合ってると思われちゃう。」

「そうなの?」

「そうだよ!」
あんたさ、好きな子が他の男子と仲良さそうに喋ってたらどう思う?」

「あ…」

「わかった?」

「うん、でも、報告だけはさせて。
お前にはいろいろ相談にのってもらったから。」

バカじゃないの。

やめてよ…

「いい。フラれたら報告頂戴。
上手くいったら噂流れてくるから、報告なんか要らない。」

「ひどいなぁ。」

「んなことありませんー。」

「ふて腐れた(笑)
じゃあ、部活行ってくるわ。」

「行ってらっしゃい。
頑張ってね。部活も、告白も。」

それだけ言うのが精一杯だった。

「ありがと。」

彼が教室を出ると、自然と涙がこぼれた。

…最後ぐらい、伝えとくか。

そう思ってメモ帳を破って、書いた。

『ずっと、好きだったよ。』

頑張って書いたボールペンの字は、涙で滲んでいった。



次の日、噂があたしの耳に届いた。
そして、下駄箱の中に入っていたメモには…

『今まで気づかなくて、傷つけてごめん。

ありがとう。』

彼の字で、そう書いてあった。

玉の緒よ絶えねば絶えねながらへば
忍ぶることの弱りもぞする

結局、隠しておけなかった。
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