4周年企画
徒然なるままに
それが起こったのはなんてことない日。
そして、特に摩訶不思議でもない日常だ。
でも、私にとっては特別だった。
徒然なるままに、ひぐらし、硯に向かいて…なんてね。
太陽が真上に近い時間に起きて、ブランチとかそんなオシャレじゃない朝ごはん兼お昼ご飯を食べて。
さあ、これからどうしようか。
寝るのは好きだけどどうせ起きたら頭が重いから却下。
なんだか今日は家にこもっていたくない。
そうだ、あそこに行こう。
中学入学で買ってもらった、すでに古い自転車を走らせる。
もう、こいつも何回パンクしただろう。
隣町に、小さな丘がある。花の名前が付いた丘だ。ここに来るのは容易じゃない。
南にある家から北へ向かうのだから。平野のど真ん中の町から、坂が多い街に行くのだから。
今は冬だ。だから、花なんて咲いてない。
でも、なぜだか来たかったのだ。
過去に二回、この周辺を走った。高校のマラソン大会で。7キロ。
相変わらずの私の運動神経では下から数えていった方が早い順位だったのだけれど。
二週間前に降った雪がまだ残っている。雲の切れ間から光が差し込んで、雪はきらきら光っていた。
これが、私の求めていたものだったのだろう。
車の音に囲まれながらも、そこは別世界だった。
おとなに近づくにつれて、世界がそんなきれいなものではないと知り、絶望する。
そのうち、そんな汚い世界に慣れてしまう。
黒く染まりきったと思ったら、雨上りの光、光に照らされた雪、虹。
そんな純粋な光に素直に感動するのだ。そんな自分に驚き、切なくなるのだ。
ぼんやりと考えていたら、無性に人に会いたくなった。
瞼の裏に、顔が浮かんだ。その大きなあたたかなやさしさで包んでくれる、あの人に。
あの場所に行こう。あの人に会いに行ってみよう。
そしたら、きっと、この陰ったものがなくなると信じて。