「な、来世でも一緒かな?」

「何を情緒的になっておる…気色悪い」

「いや、なんか、さ」

「忘れたとて、貴様が探せばよかろう」

「えーお前忘れる気なのかよー」

「さあな」

「忘れんなよ」

「善処してやらんでもない」

「なあってば、元就」

「なんだ」

「また逢おうな」




それからすぐに戦が始まった

そして二度と、会うことはなかった






-------

「あ」
と思うと体が勝手に動いていた
走る走る走る

「おい、」

腕を掴み顔を見たら人違いで
「すみません…」

もう何度目か
見つからない
いちばん逢いたい奴が
見つからない

「なんでかな」
忘れんなっつったけどなあ
あいつ覚えてんのかなあ

「おい」

「あ、すみません…っ」

考えながらぼうっとしていたら人にぶつかったらしい
いや、そんなことはどうでもいい

「あ、ちょっと」
通り過ぎようとしたそいつの腕を捕まえた

「何だ」

「いや…あ、初め、まして」

「は?」

「え、と…久しぶり、かな」

「失礼だが、以前にお会いした記憶がない。悪いが急いでいる。離してくれ」

「あーやっぱり、」
忘れてたかあ…だから言ったのになあ
なんて、多分にやけながらひとりごちてる俺は不審者だろう

「聞こえぬのか。腕を離せ、急いでいる」

「ごめん、できない、一緒に来て」

「わっ、え、こら…やめ、離せ!警察を呼ぶぞ」

「それも勘弁。つかまじで忘れるとか、お前どんだけ意地悪いんだよ…」

「何の話だ、貴様のような若白髪には会ったこともない」

「あんたが見つけろって言ったんだぜ?」
つか銀髪だっつっただろ!忘れんなよ

「何を笑っている、貴様いかれているのか…?」

普通ならまじで抵抗するよな…こいつほんとは覚えてんじゃないのか

「元就」

立ち止まった
「なんだ」

「お前覚えてんだろ」

「何故貴様のことを覚えていなければならぬのだ、元親」

何だよ…何なんだこいつ…まじで意地悪いだろ
最低だよ

「貴様だけが覚えているというのも癪に障るからな」

「久しぶり」

「何を泣いている」

「泣いてねえよ、雨だよ雨」

「そうか、雨か」



それは6月の出来事




.

[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ