頂き物小説
□逢い引き(グリ一)
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軽いリズムで近付いて来る一護に、グリムジョーも動く。
正門を降りたと理解すれば、長い足が直ぐに地面に着地していた。
その間、僅か三秒足らずの出来事。
鼓膜は何一つとして『音』を拾い上げることはなかった。
それは、グリムジョーが虚である証なのだろうか?
「一護、ダッシュで来い!」
「おう!」
片手はポケットに入れたままで、グリムジョーは一護に向かって手招きする。
飛び付いて来いと言うことなのだろう。 元気に返事を返した一護は、全速力でその胸に飛び込んだ。
ポケットに入れていた手を出し、グリムジョーは両腕を使って一護を抱き締める。
華奢な体が壊れないように。
「グリムジョー、お待たせ!もしかして待たせたか?」
「いや、時間通りだ。んなことより、お前ちゃんと飯食ってんのか?最後に会った時より体重減ったんじゃねえかよ」
「だから、ちゃんと食ってるって!会う度に同じこと言うなよ!」
眉を寄せて怒る一護だが、グリムジョーは決してからかっている訳ではない。
本気で軽いのだ。
最後に会ったのは、10日前。
あの頃に比べると、確実に痩せている。
「ったく、グリムジョーは心配しすぎなんだよ」
「あぁっ?一護のことで心配すんなって言うのが無理な話だろ?」
「何でだよ?自分で言うのも何だけど、俺しっかりしてるぞ?」
両肩に手を置いてグリムジョーを見下ろす一護は、少しだけ胸を張って答える。