捧げ物小説
□【浮かべる笑顔、心を溶かす】(ジェラナツ←グレ)
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10月31日−この日は言わずもがな、ハロウィンである。
それはお祭りの一端な為、街はすっかりその準備に精を入れている。
此処−魔導士ギルド、妖精の尻尾も例外などない。
「trick or treat」
その日一日限りの合言葉がギルド内で飛び交う。
皆、それぞれの仮装をし、お菓子を上げたりして盛り上がっている。
そんな中、一人端っこのテーブルでその様子を見ている男が居た。
まるで、そこだけ世界が違うように距離を置いている。
その男の名はジェラール。
数ヶ月前に楽園の搭での事件を巻き起こした人物である。
本来なら重い処罰が下るとこだったが、ナツやエルザの再三の抗議に渡り、
妖精の尻尾が監視という名目で、現在此処に居る。
監視とは言ってもジェラールは充分に自分の罪を請うているので、
妖精の尻尾の皆は誰一人として監視をしているなど思ってはいない。
当初は別としても今では仲間として思っている程だ。
だが、ジェラールは違う。
否、この言い方では少し語弊が生じるかもしれない。
ジェラールは仲間として受け入れてくれている皆には感謝している。
しかし、己の罪は決して消えないことを理解しているからこそ、
監視される者として皆と距離を置いてしまう。
今もそうなのである。
楽しそうな皆の姿に己がそこに入ることは許されないような気がしているのだ。
ジェラールはこれ以上居ても邪魔だろうと思い、席を立とうとした。