頂き物小説
□最初で最後の恋(火黒→←青)
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※最初黒子独白
「…テツ、俺ら、もう終わりだな…悪い」
「っえ!ちょ、待ってください、青峰君っ青峰君!」
「……」
最初黒子は何を言われたか分からなかった。
帝光中学は強い、キセキの世代は最強だと言われた時からか、はたまた、その前の、青峰達の覚醒の時か。黒子は、青峰達との溝を感じることが多くあった。
しかし、それだけだった。体格だったり、能力は昔から差を感じていたから、仕方ないと諦めていたし、周りも黒子を悪く言わなかった。例え言われたとしても、テツは俺の大事な奴だから気にすんな。そんなんで、俺達の関係は変わらない。と、青峰自身に言われたから、この先も、きっと二人の関係は変わらない。きっと大丈夫だと思っていた。
しかし、いつしか、試合中で、連携が合わなくなったり、拳を合わせなくなったことが起きてから、黒子は段々不安になっていた。
だけど、まだ頑張れた。青峰の言葉があったからだ。
それだけ、黒子にとって青峰は大切で信頼していた。
きっと彼はまた笑顔で、
相棒、バスケしようぜと、言ってくれるはずだと。
だから、今日放課後教室に残ってくれと言われて、待っていたのだ。
しかし、この日の放課後、教室で告げられた、たった一言は、黒子の予想していた言葉ではなかった。
「…青峰く…て、待って下さい!」
どういうことですかと、青峰の手を掴もうとしたが、バジりと手を払われた。
「…青峰君?」
「…悪い…」
何も言わなかった。青峰は黒子を一瞥しただけで、何も言わず教室を出ていった。
「……っ大丈夫大丈夫大丈夫、きっと青峰君は戻ってくるはず…っうぅあ…」
ボタリボタリと涙が溢れては、床に落ちていたが、黒子自身止めることなど出来なかった。
青峰と笑いあった時、怒りあった時、放課後、恥ずかしそうに手をつないで帰った時…など、まるで走馬灯のように頭に浮かんで、黒子はもっと泣いてしまった。
大丈夫。きっと、青峰は帰ってきてくれる。戻ってきてくれる。そして、また一緒に帰るんだ。そう思っていた。
が、その日、青峰が戻ってくることはなかった。
この日を境に、二人の関係が終わったのだった。
「…こ、く…黒子!」
「!あ、火神君、どうかしましたか?」
「どうかしましたか?じゃねーよ。お前が突然ボーとしたから呼んだんだよ」
ほらと、火神から渡されたのはスポドリだ。確か今は部活中だった。いつものように疲れて倒れていたときに火神が渡してくれた。
「…火神君、でもこれ、」
「いーから。お前疲れてんだろ。やるよ。…それより大丈夫か?」
「え…」
「…すごくつらそうな顔だったから、気になったんだよ。」
「!、あ、…火神君…その、ありがとうございます」
「おう。…ほら、さっさと飲んで、練習再開すっぞ」
何も聞かないでくれる火神の優しさが、今の黒子にとっては嬉しかった。
火神の優しさはいつもそうだった。たまに火神に向かって、あの人の名前を言ったとしても、俺はあいつじゃねーよ。と、笑って許してくれた。
そんな彼を好きになるのに時間はかからなかった。
それでも、
「……青峰、君」
まだ、心の中には、青峰の存在が残っていた。
忘れられなかった。
忘れる筈もなかったのだ。
しかし、今の黒子には、火神という存在がいるのだ。皆には内緒だが、密かに付き合っている。
しかし、火神の優しさに惹かれながらも、青峰を忘れられないでいた。
そんな葛藤を打破したのが、あのWCであるとは、今の黒子には知るよしもなかった。