妖怪貴族

□六ノ舞 幕開
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くろが連れ去られてから一晩が経った

大輔は一人道場にいた

彼の表情はいつもの優しい雰囲気ではなく、険しいものであった

「お疲れ様です、大輔様」

そんな大輔を心配してか幸が道場にやってきた

「幸…来てくれたんだね」

大輔は、にこっと笑った

「少し、お休みになられてはいかがですか…飲まず食わずに不眠不休ではお体に障ります…」

大輔は屋敷に戻ってからすっと道場に籠もりっぱなしで稽古をしていたのだ

「そういえば…もう朝だったんだね…」


「私以外はもう朝食を済ませて修行に入られました」
「私以外は…って事は幸はまだなの?」

「私以外は」と言う発言に疑問を持った大輔は幸に尋ねた


「えぇ…少しばかり稽古をしておりました」


「お疲れ」

大輔はくしゃくしゃと幸の頭を撫でた

「それと、お食事をお持ちしました」


「わぁっ!!ありがとう!!」

幸が差し出したのは重箱だった

中には大輔の好物が入っていた

大輔は終始笑顔で重箱の中身をたいらげた

「ごちそうさまでした!すっごく美味しかったよ!!」

大輔はすっくと立ち上がり、刀を手に取った

「もう始められるですか?」

「うん…あ、でも、その…」

「どうかなさいましたか?」
幸が問い掛けると…

「今日はずっと…僕の傍に居てくれないか?」

大輔は顔を真っ赤にして言った

「勿論ですわ、大輔様!…私の返答など、分かり切っているではありませんか」

幸も顔が真っ赤になっていた


大輔はその後、修行を再開した


(大輔様…今宵も凛々しゅうございます)

幸は心の奥で呟いた


大輔は時折幸と目を合わせて、にこっと笑いかけていた
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