■3F:はてなの文庫・参

□サイダー
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「じぃさん?オレだよ、オレ。」
「もう、流行っとらんやろ、オレオレ詐欺は。古いんよ、お前はよ。」
「孫の声も忘れるくらいぼけとんか?」
「たわけ。聞き過ぎて、飽きたわ。」
「そうか。まだ、耄碌すんなよ。」
「お前もな。そっちの生活はどうか?元気ね?」
「元気よ?じいちゃんは?」
「元気よ。互いに悩みがなくて困るねぇ。」
「あっそういえばさ、休憩中、コーヒー屋に入ったんだけど、カフェアメリカーの頼んだらさ、出される時店員の子に、超笑顔で、『キャフェアメリキャーノですっ。』って噛み噛みで言われちゃってさぁ。」
「はっはっはっは!」
「あまりに一生懸命だから、笑っちゃいけないだろうと思うけど、おかしくってさぁ。」
「はっはっはっは!そりゃぁ、仕方んなかねぇ!」
「だろー。じゃっ!またかけるわ。」
「あぁ。まっとるね。電話ありがとう。」
「じゃ。」


これが、うちの爺さん(83)と自分(25)との、いつもの電話での遣り取りだ。
俺が、上京してからだから、約5年間。
3日に1回の割合で、俺は爺さんに電話している。
どんなラブラブ振りだ。
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