■3F:はてなの文庫・参

□祭
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「祭りを始める。」

松之介の、その低くドスの利いた声が、教室中に響き渡る。

放課後、クラスメート達は、やれバイトだ、部活だ、と忙しく動き回っているようであるが、まぁそれは所詮、他人事。

放課後の教室はいつも俺たち5人が、何をするわけでもなく、だらだらと過ごすために活用させてもらっている。

各々遊んでいた手を止め、他4人が、松之介の方へ振り向く。

「で、今月の神さんは誰なん?」
と、やや西の訛が抜けない調子で桜が尋ねる。
桜と言っても苗字であり、本人、それはそれは清楚な顔立ちのイイ男である。

「確か、5月はケぇツから2番でぇ、柳だねぇぃ。」
と、語尾にまでだらしなさを残す、霧埜が答える。
あぁ机に凭れかかり、口から出てきてしまうほどの飴ちゃん舐めていたら、そりゃぁ、口に閉まりはなくなりますね。

「なんだよぉ。はずかしいだろぉ。見んなよぉ。月山ぁ。きゃっきゃ。」
と、俺の視線に気づいた霧埜が、両手で顔を隠し、照れたような子芝居をうつ。
まぁ好きにすればいい。

「柳は、何か希望ある?一応聞いとく。」
と、俺が尋ねると、完全に夢の世界に落ちていたらしい柳は、

「どがぁぁぁ」
と、声にもならない音を出し、涎まみれの顔を、机からはぎ起こす。
デコには、丸い赤色の跡がついている。これは居眠りの紋章。

完全に半開きの目で、左手を挙げ、

「じゃ、パンツ。」
と、半覚醒状態で宣言しやがった。
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