ぶっく

□嘘つき。
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「よぅ来たな」



ベッドの上に横たわっていた祖父は以外と元気そうに見えた。

癌だと聞いていなければただの過労だと言われたら信じていただろう。

それくらいまだ元気だったのだ。



「…直志。お茶買ってきてもらえる?」

「…うん、じゃあ行ってくる」



母さんは多分祖父と話がしたかったんだと思う。

きっとそれは僕が聞かない方が良いような話。

母さんは少しの間、僕を部屋から離したかったんだ。多分。



「あれ?直志くん?」

「…えっと…あぁ、あの時の担当の…」



僕は自販機の前で前の担当だった看護師と鉢合わせした。



「…香苗ちゃん、会いたがってたよ」

「…え?」

「まさか何にも言わないで退院するとはね…一言くらい言ってあげれば良かったのに」



あの日の事を知っている人がここにいる。

言わなかったんじゃない。

言えなかったんだ。

傷つけてしまいそうで…怖かった。








彼女は儚げで。

僕が触れただけでも壊れてしまいそうな気がして。

いつも僕は怖かった。

君を無くすことを恐れていたんだ。





 
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