「オフ会」シリーズ

□序・リアル・遭遇
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 普段あまり本を読まない(むしろ、その時間を惜しんで『The World』をプレイしていた)のだが、この日は学校帰りに、苦手教科の参考書を買うため本屋へと立ち寄った。

 さすがに大手だけあって、品揃えは豊富だ。ただ最後に来たのは二ヶ月以上も前で、内装と本棚の配置が変わっていることにまず辟易した。
 足繁く通うことはなかったその本屋の一角には、紙媒体としての生き残りを賭けてか、珈琲チェーン店が増設されている。だが店の思惑を外れて、人気は少ないようだ。
 通りすがりに全面ガラス貼りの窓から覗いた店内では、二人のカップルがテーブルに向かい合って座り、M2Dと思しきサングラスをかけていた。手前のコーヒーとケーキには、一切手をつけていない。
 ここにも中毒者か、と亮は呆れた。
 自分も人のことは言えないが。
 苦笑しながら、自動ドアを潜って店内に入った。


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