novel

□cherry blossom
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千もの花びらが宙を舞い、残酷なまでに獲物を切り裂く





染まる赤






そう、桜の花とは残酷で




『緋真。桜の花びらの色は…』




『存じております。桜の木の下に沢山の死体を埋め、その血を吸い…桜に色が付いた
のだと。』







残酷でその赤を吸い、色付く






『それでも私は、白哉様を守ってくれる桜が好きです。』








変わらぬ笑顔でふわりと微笑んで




その姿が儚くて









お前を侵食するその病が憎かった








『白哉様、緋真には願いがあります。』



『…願い?』




『きっと…近々外に出られる機会がなくなりましょう…』



『…緋真…』







宣告を受けてからの、緋真の病の進行は早かった。






『ですから、叶うなら最後の時は…暖かな春の日差しの…桜や梅の花が満開の時
に…『緋真!!』






私は思わず声を荒げた。
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