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□仮想悲夢-カナシキユメ-
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「……もう、お終いなんだ?」



クルクルとクナイを手で回しながらパシッと握る金糸の幼子。



「簡単、だな」



気配を消さずとも尋常ではない速度で移動を可能とする自らの脚は敵の背後に回り込む事など簡単で。


首筋に刀の切っ先を宛てがいスッと引くだけでソレは簡単に崩れ落ちる。


そして広がるは赤、赤、赤。


琥珀色をした地面にジワジワと染み込むように広がっていく血液の海。


辺りを漂う血液独特の生臭さと鉄のニオイが、今さっきまでソレが生きていた人間だと知らせるだけ。



「……脆いな」



人間なんて、


所詮そんなモノ。


そんな事は嫌と言う程、解っているけれど。



「ねぇ、ナルト」


「……なんだよ」


「貴方は幸せなの?」



意識が忘却の彼方へと連れ去られる刹那の瞬間。


キラリと輝き光りながら頬を伝う涙の雫。


その雫と共に彼女は言った。



「幸せ?」



そんな事、知る訳がない。



「……なぁ、サクラ」



『幸せ』って、なんだ?



笑顔でいれたら


人を愛し愛されたら


それは幸福なのか?



「……ハハ、バカみてぇ」



自嘲気に苦笑を浮かべながらも、ポツリと、そう呟いたナルト。


そんな感覚は当の昔に麻痺してしまったというのに。



「なぁ、サクラ」



風に波打つよう静かに波紋を広げる湖に浮かぶ月にナルトは顔を上げた。



「幸福なんて」



ありえないんだよ。






 

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