どの様な御話をお探しで?

□【ある国の噺】
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いつだか

どこだか

遠い昔か

近い未来か

1つの國があった

その國では

《自分で考えなくて良い脳》の研究が活発だった

学者達は集い

政府は研究を奨励した

そしてついに

《自分で考えなくて良い脳》が造られた

それは元の自分の脳に
新しい脳を埋め込むのだ

そうすると

自分ではなく

その新しい脳が物事を考えてくれるのだ

勉強も感情さえも担ってくれるのだ

余計なことはなに一つ考えなくて良い

この発明はとても素晴らしいものと言われ

すっかり《自分で考えなくて良い脳》は

富裕層を中心に広り

親はこぞって良い脳を自分の子供に埋め込んだ

政府は新しい脳の所有者が独占し

まったく新しい脳は<正しい脳>になった




数年が過ぎ

まったく《自分で考えなくて良い脳》は大衆化していた

政府は《自分で考えなくて良い脳》の埋め込みを義務化する法律を作った

しかし

たった独り

その法律に反対する者がいた

その男は

「自分で考えなくて良いというのは、まったくの不自由であり不幸だ」

と言い

王の

政府の

国民の

反感をかい

自分の国を追い出されました




また数年が過ぎ

その国はもうありません

その国の人は

たった独りを残して

皆さん滅んでしまいました

世界中でたった独り

たった独りを残して

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