過去篇短編集
□Identity
2ページ/3ページ
もちろん判っている。それは他でもない自分。
身の内に休む事の無い激しく煮える憎悪を持つのも自分。
こんなにも容易く残虐になれるのも自分。
――これでええ
自らの心身など只の目的の為の手段だ。それだけに在れば良い。
なのにフウと溜め息が出、ギシと心が軋む、でもそれは必要ない。
立ち上がり、冷え切って痺れた腕をダランと下げた。
途端に酷く腹立たしくなり故意に桶を蹴ると、バシャと不快な音を奏で波の形に土が黒く湿った。
ジワジワと問答無用に侵食するその様はギンの怒りを煽る。
―何人とか、問題やない
実に他愛なかった。今日も、先日殺した五番隊の三席とやらも。
一瞬、恐怖に顔を歪め口を開きかけて、終わり。
あれで上位席官とは笑わせる。
あの程度なのだ、死神は。
あの程度でのさばり勘違いし無力な他人を搾取する。
心を、千切る。
●●