過去篇短編集

□Identity
3ページ/3ページ




ギンは口角を上げた。


何もかもが下らなく、それでも自分はここに居る。




あの男と皆同じ、そんな筈はあるまいに。
殆ど八つ当たりである事すら知っているだろうに。



しかしその上でどんな非道な事でも出来る何処までもやれる、そう疑っていない自分はもはや変じたのだ。






―何に…?







その時、転ばせた桶が一人でに動いた。
同時に、どこから来たのか白蛇がゆるりと姿を現す。







ゆるり






ゆるり






ゆうるりと。






ギンの方へ這ってくる。
それは静かに執拗に、油断なく獲物を狙い続ける。







それを見て咄嗟に、


ギンは悟った。知恵の輪を解いた時の愉しさだ。







――そうや、ボクは、















【了】
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ