過去篇短編集
□Identity
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ギンは口角を上げた。
何もかもが下らなく、それでも自分はここに居る。
あの男と皆同じ、そんな筈はあるまいに。
殆ど八つ当たりである事すら知っているだろうに。
しかしその上でどんな非道な事でも出来る何処までもやれる、そう疑っていない自分はもはや変じたのだ。
―何に…?
その時、転ばせた桶が一人でに動いた。
同時に、どこから来たのか白蛇がゆるりと姿を現す。
ゆるり
ゆるり
ゆうるりと。
ギンの方へ這ってくる。
それは静かに執拗に、油断なく獲物を狙い続ける。
それを見て咄嗟に、
ギンは悟った。知恵の輪を解いた時の愉しさだ。
――そうや、ボクは、
【了】