ビタチョコ小説

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「おいで」

真っ暗な空間の中、誰かに呼ばれた気がした。

「おいで」

しわがれた声、

「おいで」

幼い声、

「そう、こっちへ」

野太い声、

「ちがう、こっちへ」

か細い声、

「おいで」

老若男女全ての声に聞こえるその声が私に言うのは一つ。
どこかは分からない。ただ、そこに来いと言われる。

「おいで」

その声はとても不気味で孤独感と不安感をくすぐられる。
なのにどこか愛おしくも聞こえて。

「こっちへおいで」

暗闇の中、ただ歩いた。

「そう、こっちへ」

どれぐらい歩いたか分からない。
真っ暗だからもしかしたら本当は歩いてないかもしれない。
けれど、私は辿り着いた。

「とびらをあけて」

私の身長の半分も満たない、小さな扉の元へ。

「はやく、とびらをあけて」

そう扉が言ったのとほぼ同時に、気が付いたら私はドアノブに手を掛け、その手を捻っていた。




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