novel
□獣達の宴
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農家の息子はとにかくモテない。
コンビニすらない田舎。
汚れるイメージが否めない農作業。
毎年毎日代わり映えのしないサイクル。
家族のような付き合いの近隣住民。
その全てが現代に生きる女の子には受け入れられないんだろう…
俺だってイモ臭いとは思ってる。
だからこそ、自転車で30分の高校じゃなくてバスで2時間かかる都会の高校にわざわざ通っているわけで……
3年も通っていたらいい加減早起きには慣れるけど、都会へ想いを馳せていた俺の期待はあっさりと裏切られた。
卒業を1週間後に控えた今になっても、彼女の一人さえ出来なかったのだ。
ここにきて俺はようやく気が付く。
農家の息子以前に、超平凡な俺だからこそモテないのだと。
顔も、運動神経も、成績も平凡。
平均以上なのは177cmある身長と、農業や田舎ならではの風習による様々な家事の知識。
料理が上手かろうが、洗濯板で洗濯できようが、農作業が完璧にできようが、普通の高校生活を送っていたらまず活かせない。
身長も平均よりは高い程度だし、俺には自慢できる特技さえなかったんだ。
いつもの席に座って眺める見慣れた山間の風景。
窓の外をゆっくりと流れていく風景を眺めていたけど、どんどんと眠気が押し寄せてきた。
バスの揺れも心地良い。
3年間乗っていたからバスを運転してるおっさんとも顔見知りだし、眠っていても周りのみんなが知り合いだから起こしてくれる。
きっと今日も誰かが起こしてくれるだろう。
そう思って俺は、重たくなってきた瞼に逆らうことなく目を閉じた。
それが、俺の見た最後の日常になるとは思いもせず―――…