流れ星の唄声
□08.生きるということ
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私には親は居ない、と思う。
とにかく記憶がある限りでは
そのような人物は思い当たらなかった。
簡潔に言えば、捨てられたのだろう。
気がついたら私は独りだった。
――…守ってくれる人はいない。
頼れるのは自分自身だけ。
この事実を早くから理解したせいか、私は年齢の割に自我の認識がかなり早かったと思う。
村に入れば「汚い」と言われてみんなに蔑まれた。
それだけならまだマシだ。だがたまに変な男が近づいてくることがある。
何をされるのかなんて分からない。
ただ怖い、と思った。嫌だ、と思ったからわたしはそれから必死で逃げた。
力ではどう考えてもかなわない。
捕まったらおしまいだ。
それだけを考え、いつもまわりを警戒した。
村には極力近づかないようにもした。
人が居る所は怖い。
男は怖い。
自分が知らないものは、怖い。
人目に付かない木の上や生い茂った草むらの中で毎晩眠っていた。
当然十分に眠ることも栄養をとることもできない体は日に日にやつれていく。
恐怖という感情が他の感情を
真っ黒に塗りつぶしていく。
まるで感情が消えてゆく様だった、