恋わずらい
□君が僕を想ってくれるなら
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前方の教団の前に立つ、新任教師の先生を見つめると、現代文担当らしからぬ若々しい容姿がきらきらと眩しく見えた。
無表情だと冷たくも見えるのに、笑うと違う人みたいに可愛くなる。
目がくしゃっとなって、目尻に小さな皺ができるところが大好き。
綺麗に整えられた細めの眉は、先生がプライベートでは“先生”でない事を思い知らされる。
授業をしている先生は、色気なんてものを感じさせないように溌剌としているけど、夏休み間際のうだるように暑い教室で汗を拭う姿は、男の人の色気を感じさせた。
適度に整えられた無造作の黒髪は、授業に集中するあまりか、汗の雫が髪を伝った。
今時、クーラーどころか、扇風機すらない教室。
うなだれる生徒が多い中、先生の授業だけはみんなが生き生きと授業に参加していた。
「要するに、俺はもうあなたの事を忘れるよ。忘れるから、最後にせめてあなたに直接会ってから別れを伝えたい。人づてなんかじゃなく、自分の口からあなたに言いたいっていうような歌」
「ふうん」
隣の席の友達の奈乃香が興味深げに呟いた。
それをチラリと見ながら、もう一度先生の顔を見る。