恋わずらい
□君が僕を想ってくれるなら
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担任じゃなく、授業担当の先生と会えるのは、一週間にたった4時間だけ。
その時間を無駄にしたくなくて、教科書を見ずに先生を見つめる私の成績はなぜか上がっている。
先生の言葉を逃したくないと集中しているからかもしれない。
「直接会って別れを告げたら忘れられるとでも思っているのかなぁ。どっちにしても切ないな、うん」
先生は何度も切ないと繰り返し、和歌に浸るようにしみじみとしていた。
だけど、私は何となく解釈が違うような気がした。
先生をじっと飽きずに見つめていると、やっぱり困ったように笑った先生が、私に視線をやって名前を呼ぶ。
「なんだ、関谷(せきや)。この和歌が理解できるか?」
いきなり当てられて、少し首を傾げた私は、この和歌に思いを馳せながら言葉を発した。
「直接会って別れを告げたって忘れられない事は分かってると思います。そういうので会いたいって言ってるのじゃなくて、別れる事を口実にしてでも、あなたに一目会いたいっていう歌じゃないかな……って、私は、思ったり……」
ついつい熱く語ってしまって我に返った私は、慌てて先生から視線を逸らして机に俯いた。
クラスのみんなには、関谷ロマンチック〜なんてからかわれたりして、余計恥ずかしい目にあった。