恋わずらい
□そして、たまらなく愛しい
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「高校を卒業するまででいい。もっと俺になにかさせて。あなたのためになにかさせて。ありがとうって言わせて。……そして、たまにでいいから頭を撫でて下さい」
その最上の告白に私は困り果てて、曖昧に笑ってごまかした。
目の前の綺麗な男は、悲痛をこらえるような顔で、真剣な瞳ですがっていた。
高校卒業の1年と1ヵ月前。
2月の雪の降っている日だった。
―――――…
――…
終わりはなんてあっけないものなんだろう。
あの時の真剣だった彼はどこにいったのか。
私はあの日の彼を思い出す事がもうできなかった。
印象に残らなかったわけじゃない、ただ時間が経ってしまったんだ。
あのときと同じ、相変わらず見た目は最上級に綺麗な男を心虚ろにじっと眺めた。
「今までありがとう。卒業だからもう会えなくなるけど元気でいて。…そして、もしどこかで偶然会った時は笑って下さい」
何のドラマだ。
このセリフだけを聞いたら。
お互い胸に着けている造花の花だけを見たら。
何か悲しい別れなのかと思うじゃないか。