恋わずらい

□君が僕を想ってくれるなら
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「じゃ、この和歌の解説いくぞ」


この状況で教科書を見ていないのは、クラスを見渡しても私だけだった。

進学校のうちの高校の生徒たちは、先生をからかいながらも越えてはいけない境界線を知っている。


ちゃんと授業に戻って行く優秀な生徒たちの中。


私だけ、先生を見ていた。


「この和歌は小倉百人一首に載せられている歌の一つで、切ない恋の歌の代表って感じだな。出だしから切ないんだぞ」


先生の言葉は私の脳裏に突き刺さって、ビリビリと全身を刺激して、背中がぶるりと粟立った。

一人顔をあげている私に気付いたのか、一度先生が教科書から顔を上げて、私を視界に入れる。


目が合った瞬間、思わず視線をそらしてしまう私の視界の端に、困ったように笑う先生の姿が見えた。


「今はただっていう出だしは分かるよな。その後の、思ひ絶えなむっていうところは、思い絶えなんって読むんだぞ。あなたへの想いを絶ってしまおうとっていう意味だ」

生徒たちはこくこくと頷いている。

 
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