恋わずらい

□君が僕を想ってくれるなら
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さっきまで堅苦しい政治経済の授業だったせいか、恋の和歌にみんな興味津々だ。


昔の言葉は難しいけど、先生の砕けた説明は、頭にすんなり入ってきて、恋愛を熱く語る和歌にみんなそれぞれ思いを馳せる。


「下の句の、人づてならで いふよしもがなは、人づてじゃなく、直接あなたにお話しする方法があったらいいのになぁ…という意味だ」

「えぇー切なぁい」


前の方の席に座る女生徒が、吐息混じりに言葉を発する。

それに先生は優しく笑って、「だろ?」とにこやかに笑った。


「この和歌の恋の相手は、皇女で、その時代皇女は一生独身、恋愛禁止みたいな事があって。すなわち、二人は禁断の恋に落ちてたって事だな。それを皇女の父親、いわゆる天皇の耳に入り、二人は引き裂かれたのちに、この歌を男が詠んだと言われている」

「どろどろじゃん、先生。昼ドラ並み」

「昼ドラみたいだよなぁ」


軽いクラスメートの言葉にも先生はいちいち相槌を打ってあげている。

私は教科書に載っているその和歌をじっと見つめた。

禁断の恋、引き裂かれた二人。


教師と恋をすればきっとそうなる。

 
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