駄文

□第一章 “幻想の始まり”
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…そうだ、俺は理解していた、あの猫を救えば確実に俺が死ぬことを、だけど……俺は救った。俺が行き着いた思考の終点は“何の利益もないのに他者を救う”というものだった。
『そうじゃ、お主は救った。何の利益もない他者をな、じゃがそれが下せぬ。人は……いや、生物とは利益を求めて動くものだ。しかも今天秤に架けられているのは他者の命と自分の命じゃ、重みは量るまでもない自分の命の方が大切に決まっておる。』
そうだ、大切な人ならまだしも他者の命と自分の命は量るまでもない。人は……いや生物は自分の命を選ばなければならない。
『そう、それは自分の命を失えば、その大切な存在を悲しませ、傷をあたえ、そしてそのもの達の“時間”をも奪うことじゃ。お主はそれが“解って”いた、自分の命の重みも、大切な存在がどうなるかもな』
それは考えなくてもわかっていた事だった。俺が死んでしまえば両親が悲しみに打ちひしがれてしまうことも、友達が友人が死んでしまったと暗い気持ちになってしまうことも。考えなくてもわかる事だ。“親”が“子”の死を嘆かないわけがない。もし悲しまなければそれは“親”でもなんでもない、それこそ唯の“他人”だ。
          だけど−−−−
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