てにす
□君に涙は似合わない
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言うつもりなんてなかったのに。
「先輩、好きです」
…あぁ、先輩困ってる。
柳先輩の困った顔って結構貴重かもしれない。
「なまえ、俺は…」
「わかってます。先輩、彼女さんいるんですよね」
そう、先輩には私たち2年の間でも専ら噂になっている、美人で勉強・スポーツ共に難なくこなす完璧な彼女さんがいる。
「あはは、冗談ですから気にしないで下さいね。それじゃ、お疲れさまでした。お先に失礼します」
「あぁ、お疲れさま。また明日」
部室を出ると無我夢中で走った。
「っう…はぁ、はぁ…っ」
涙が止まらない。
わかっていたはずなのに、なのにどうして。
それなりに覚悟してたのに。
きっと先輩は私の気持ちに気づいてた。部活の先輩方も薄々気づいてただろう。
色々気を遣わせてしまったと思う。柳先輩の彼女さんがコートに一度も来なかったのはたぶんそのせい。
…先輩方、優しいからなぁ。
「…、大丈夫」
きっと忘れられる。
今はまだ辛いけれども…