てにす
□安定剤
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夜は怖い。
ひとりぼっちな気がして。
自分だけ世界から取り残されたような気がして。
時が止まったかのような静寂に包まれて。
膨大な闇が私の心を圧迫する。
言い知れぬ孤独感や恐怖に戦慄き、涙を流す。
暗い
怖い
目をきつく瞑り布団にくるまる。ガタガタと震えは止まらない。
すると突然、枕元に青白い光がぼう、と灯る。
携帯電話が着信を知らせていた。
こんな夜中に誰だろう、という考えは浮かばず、ディスプレイも確認せずに通話ボタンを押した。
誰かと繋がることで闇から抜け出せるような気がした。
「はい…」
「俺だ、なまえ」
「れ、蓮二…?」
電話口からは孤独感に苛まれているのではないかと思ってな、と聞き慣れたテノールの声。
「下を見てみろ」
言われるままにカーテンの隙間から覗けば、ひらひらと手を振る蓮二の姿が見えて、すぐさま部屋を飛び出した。
「な、何してるの?」
混乱している私の様子が可笑しいのかフッ、と笑われた。
「さっき言った通りだ。眠れなかったのだろう」
「……うん」
「なまえ、おいで」
呼ばれて、すっぽりと腕に収まる。
胸に顔を押し付ければ蓮二の匂いがした。
頭を撫でて貰えば先程まで感じていた恐怖は吹き飛んでいて。
「…落ち着く」
「そうか」
柔らかな声を耳にし、いつの間にか蓮二の腕の中で眠りへと落ちていった。
柳は超能力者ばりに彼女の事を分かっていそう。彼女が精神不安定のときは駆けつけます