てにす

□ストイック崩壊
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「やなぎー」


ずしっと背中にのし掛かる重み。


何だ、と柳が問えば、暇だから構って、と。


なまえが一緒に帰りたいから待ってる、と言ったくせに飽きてしまったようだ。





「まったく…」





と溜め息をつき、後ろから抱き着くなまえを引き剥がし、再びデータをまとめる。





「大人しく待っていろ」


「あとどれくらい?」


「十分程だ」





構ってもらえないと諦めたのか向かい側に座り小説を読み出した。
その小説は読書が苦手ななまえに読みやすいから、と柳が貸したものだった。
よく見れば、半分以上読み進めているようで、頬が緩む。やはり自分が勧めたものを読んでもらえるということは嬉しいものだ。


早く終わらせて帰ろうと手を動かした。












「なまえ、終わったぞ」





ようやく終わり、顔を上げると、横になり眠っているなまえの姿。





「寝て…」





寝てしまったのか、という言葉は飲み込まれた。

視界に入るスカートから伸びた白い足。暑いため、第二ボタンまで開けられている胸元。無防備な寝顔。


小さな部屋に二人きり、しかも男とだというのに感心しないな。

柳は微かに眉間に皺を寄せた。


そして、それだけ信頼されているのだろうか、いや、自分は信頼に値する男ではない、と自問自答する。
現に、今、この時間も平常心を保つのに必死であった。

色恋沙汰に疎いなまえのために何もせず、大切にしてきたが、それも今日まで。





「お前が悪い、なまえ」





なまえの頬に手を滑らせ口付ける。

ちゅ、と音をたてて離れれば目を見開き吃驚した様子のなまえと目が合う。

どうやら目が覚めたようだ。





「何だ、起きたのか」





残念そうに言う柳の言葉など全く耳に入らないようで、頬を真っ赤に染め、口をパクパクしている。





「金魚のようだな」


「き、きききキス!」


「きが多い」





だって柳が…!等と言っているなまえにお前が悪い、と言い放つ。





「そんなことな…っ」





それでも反論するなまえの口をキスで塞ぐ。


なまえはいっそう赤く頬を染めることになった。







ストイック=禁欲主義的
柳は彼女を大切にしそう。



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