てにす

□君欠乏症
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「萩、」


「俺のことは気にしなくていいよ」





気にするから。


なまえはそっと溜め息を吐いた。
今日は萩の様子がおかしい。
家に来るなり、課題と格闘している私に抱きついてきたのだ。
それは普段の萩なら有り得ないことで、何かあったのでは?と少々心配になる。



取り敢えず引っ付く萩を引き離そうと、首に回された腕をほどこうとするが、





「なまえ、もう少し」




と、腕を封じ込められ、一層強く抱き締められることとなった。




しばらくして少しだけ腕の力が緩んだと思うと、ゆっくり、優しく、頭を撫でられる。
心地好くなってしまった私は課題を放り出して萩に身を委せることにした。
背中越しに伝わる鼓動はひどく私を安心させる。


少し速めの心音を聴きながら、なまえは眠りに落ちていった。
















「ん…」


「あ、起きた?」





真正面にはにこりと笑う整った顔。


ああ、私は寝てしまったのか。


と、覚醒しきっていない頭で考え、むくりと起き上がった。

あ、膝枕されてたのか。
起き上がってしまった、勿体ない…

そんな思いが顔に出てしまったのか、いつものミステリアスな笑みで、残念そうな顔してる、と言われてしまった。

心が見透かされてるようで何だか恥ずかしい。





「まだいいよ?」





やんわりと肩を押されて、私の頭は萩の膝に元通り。

萩には、たまに有無を言わせないというか、見た目によらず強引なところがある。まぁ、そんなところも好きなわけだけど。





「あ、そいいえばさ」


「ん?」


「萩、今日どうしたの?」


「そうだね、」





下から見るちょっと困ったような顔も綺麗だなーなんて。





「敢えて言うならなまえ不足かな」





見とれていたらこの発言だ。
困ったような顔は何処へやら。すっかり不敵な笑みに様変わりしている。
しかし、そんな恥ずかしいことをさらっと言うなんて…





「は、萩?」


「なまえ照れてる?」


「いや、違う。断じて違う」


「全く可愛いんだから」








(ふふ、充電完了)
(…私も充電したい)
(いくらでもどうぞ?)








滝さんや幸村は恥ずかしいことをさらっと言うんじゃないかと。


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