てにす

□意外と気づかないものなのです
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大好きで大好きで大好きすぎて。
玉砕覚悟で告白した私への返事は予想外のYES。
てっきり振られるものだと思っていたから「正気ですか」なんて意味不明なことを言ってしまった。
そしたらあの人は可笑しそうに笑っていたな。


「はぁ…」
「溜め息吐くと幸せ逃げるよ」
「……うるさい。幸せじゃないから溜め息吐くんだよ」
「ふふ、随分荒れてるね」


そんなことない、とは言えなかった。最近の私は確実に不機嫌だ。
原因である本人にはそんなこと言えないのだけれども。


「蓮二?」
「……」


言葉の代わりにコクリと頷いた。

一発で言い当てるなんてやっぱり幸村は魔王だ。ていうかどうせわかってるくせに態々言うな。底意地の悪いやつめ。


「なまえ?」
「ごめんなさい」
「分かればいいんだよ」


はぁ、と溜め息を一つ。
空を見上げればどんより灰色で、まるで私の心を写しているようだと思った。


「柳ってさぁ…最近山中ちゃんと仲良いよね」
「そうだね」
「私よりもね」
「…そうかな」
「そうだよ。私とは目も合わせてくれないし、態度が冷たいし、優しくない」


これじゃクラスメイト以下だ、と机に突っ伏した。

山中ちゃん可愛いからな、好きになってもおかしくない。
私が男だったら山中ちゃんと付き合いたいもん。


「…らしいけど、どうなの?蓮二」
「あぁ、」


…ちょっと待って。
今柳くんの声がした。
でもこの時間に柳くんがいるなんてあり得ない。
そう、あり得ない。
きっと聞き間違


「なまえ」


…いじゃない。

恐る恐る顔を上げれば苦笑する柳くん。
いつからここにいたんだ。


「あの、」
「×月×日生まれの△型。家族構成は父、母、姉、兄。好きなものはお菓子全般、小動物、睡眠。嫌いなものはピーマン、ニンジン、それからキノコ類、ゴキブリ。媚びるような典型的なぶりっこや、権力でモノを言うタイプが苦手。さっぱりしたタイプには好意を持てる。機嫌を直すには、」


柳くんは言葉を区切ると頭を撫でた。


「こうする」
「どうして、」
「どうして知っているのか、とお前は言う」


先を読まれたことに驚いていると柳くんは言葉を続けた。


「山中に聞いた」
「山中ちゃんに?」
「お前のことを知りたかった」


えーと、最近山中ちゃんと仲良かったのは私の事を聞くため?



…あれ?私って思ったよりも愛されてたり…?




意外と気づかないものなのです











いつもとは違う感じの柳さん。
柳が不器用だったら可愛い。


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