ぎんたま

□misunderstand
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「好きです…っ」


うわ、嫌な場面に出会してしまった。
4時限目は自習だからサボろうと思って裏庭に来たはいいけど…


「…告白の真っ最中ですか」


ちら、と校舎の陰から覗くと顔を真っ赤にした女の子がスカートを握りしめて俯いていた。
生憎私には人の告白を覗くという趣味はないので(ちら見したのは別ね)屋上にでも行こうと来た道を引き返そうとしたが女の子の言葉によって私は縫い付けられたかのように動けなくなってしまった。


「好きなんです…高杉先生」


「おめェ、」と高杉先生が口を開いたとき私は走り出していた。
嫌だ、返事なんて聞きたくない。



夢中で走っていたから前から歩いて来る人物に気づかなかった。
相手がうわっと声をあげたときにはもう遅くて。


「…っ!」
「っと。廊下は走っちゃいけませーん。ってあれ、もう授業始まるだろ。何やって」


んだ。
という言葉は続かなかった。
たぶん、私の頬を伝うものに気づいたから。


「あー、準備室来るか?イチゴ牛乳くらい出してやる」
「…うん」


察してくれたらしい銀ちゃんは授業をサボることを咎めることなく私の腕を引いた。





「─っていう訳なの」
「でも返事聞いてねーんだろ?」


でも…と私は言葉を濁した。
小さくて、可愛らしくて守ってあげたくなるような女の子だった。


「はは、告白するまえに失恋しちゃったよ」


あ、自分で言っといて悲しくなってきた。


「うぇー…銀ちゃん」
「はいはい」


ポンポンと頭を撫でてくれる手が心地よい。トス、と銀ちゃんの胸に頭を預けたとこでドアが開いた。


「何やってんだ、てめェら」
「…っ」
「見てわかんねーの?」
「…ふざけてんのか」


地を這うような低い声に準備室はピリッとした空気に包まれた。


「…チッ、行くぞ」
「やっ…」
「来い」


グッと腕を引っ張られた。
どうしよう、と銀ちゃんに目で訴えると行ってこいと口パクで言っている。



あぁ、もうやだ。
ていうか女の子は?
私に何の用?

言いたい事は色々ある。


ぐいぐいと引っ張られて連れてこられたのは保健室。
じっと凝視されて居心地が悪い。


「…な、なんですか?」
「おめェ、アイツと付き合ってんのか」
「銀ちゃんのことですか?別に先生には関係な…きゃ!」


掴まれたままだった腕を軽く引くとベッドに突き飛ばされ上から押さえ付けられる。


「関係ねェだと?」
「や、ちょっと…っ」


耳に唇をつけて低い声で囁く。
体がぞわりと粟立った。


「大有りだァ」
「っ…意味わかんな、い」


一瞬のことだった。先生には似合わない、触れるだけのキス。


「え…あ、」
「ククッ、こういう意味だ」


なんで?
なんで私にキスするの?
意味わかんないよ…


「…、っう…」
「おめェだけだ。その様子だと何か勘違いしてるようだがな」
「…かんちがい?」


私の涙を拭いながらあァ、と答えた。


「でも可愛い女の子に告白…」
「…見てたのか」
「裏庭でサボろうと思ったら2人がその、」
「あ?サボりだァ?」
「あ、いや…昼寝を」
「どっちも同じだろーが」


ビシッとお見舞いされたデコピンが地味に痛い。


「ったぁ…」
「とにかく彼女云々はおめーの勘違いだ。ったくどうしたら告白が付き合うになんだよ」
「…あは」
「で?」
「え?」
「返事聞かせろや」
「え、あの」
「まぁ、イエスしか受けとんねーがな」


ククッと喉を鳴らすともう一度私にキスをした。









(そういや銀八とはどういう関係だ)
(あ、ただの幼馴染みです)
(…そうかよ)
(もしかしてヤキモチ…?)
(少し黙れや)
(んーっ)

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