ぎんたま

□ノンシュガーの甘み
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カツカツカツ。
テーブルを爪で打つ目の前の彼は若干苛立った様子でパソコンとにらめっこしている。
パソコンの脇に置かれた灰皿には吸い殻の山。
…あんなに吸ったら体に悪いんじゃないだろうか。

ちょうど課題もキリが良いところまで終わったし、先生にコーヒーを入れて休憩しよう。
課題を片付けると台所に向かった。


「土方先生、そろそろ休憩しましょうよ」
「あ?…あぁ、そうだな」


未だ眉間にシワを寄せている先生に声を掛けると、先生は時計を見て息を吐く。
テーブルに散らかった書類を軽く片してソファに移動する彼の後に、私もカップを持って続いた。


「どうぞ、先生」
「悪ぃな。つーか、その先生っての止めろ」
「あ、」


俺はもうお前の先生じゃねーだろ、と先せ…土方さんは呆れ顔で言う。

私はこの春、高校を卒業し、無事大学生になった。
当時高校生だった私と担任の先生だった土方さんは所謂"イケナイ関係"というやつで。
卒業したので今は他人の目を気にしなくて良いし、街中も堂々と歩ける。

話がそれだが、そんなこんなで彼を3年間『土方先生』と呼んでいた私は卒業して5ヶ月経つ今でも昔のように先生と呼んでしまうのだ。


「名前で呼べって言ってんだろ」
「んー…、何だか慣れなくて」
「いや、いい加減慣れろよ」


ソファ前あるローテーブルにカップを置くと、腕を引かれ土方さんの隣に収まる。
背もたれに体を預けると私の肩に腕を回し抱き寄せた。
お、何だか甘えたモードだ。


「土方さん、」
「…そっちじゃねぇよ。十四郎って呼べ」
「ととと十四郎さん」
「吃りすぎだ、バカ」


小さく笑うと顔が近づき、唇が重なる。
離れたと思ったらペロ、と唇を舐められた。


「ん、甘ぇな。何飲んでんだよ」
「ミルクココア」
「…クク」
「文句あんのか土方コノヤロー」


お子さまだとでも言いたいのだろう。
何だかムカついたので高校で仲の良かった先生の口癖を真似てして、少し反抗してみる。


「ク…、コーヒー、飲んでみるか?」
「いらない…。しかもそれブラックですよ?坂田先生はクソ不味いって言ってました」
「あれは糖分バカだから美味さがわかんねぇんだよ。ほら」
「いりませんー、あ、もしかしてあれですか。飲んでみるか?とか言って間接キス狙ってるんでしょう。やーだー土方先生ったら!」


おちょくるような口調に怒るかなぁ、って思ったけど至って普通に、何言ってんだこいつ、といった感じで返された。


「んな面倒なことしねぇ。中学生じゃあるまいし、直接すんに決まってんだろ。なまえ」


言い終えるとカップに口をつけ、コーヒーを口に含んだ。
呼ばれた私は、え?と口半開き。その隙をついて十四郎さんは口を塞ぎ舌を割り込ませる。


「…!!」


口の中に苦味が広がる。
うそ、直接ってこっち?直接飲ませるってことかい!私はキスの方だと思ってたんだけど!飲み物口移しとか絶対やらない人だと思ってたんだけど!
普段の十四郎さんからは考えられない、こんなことをするなんて。

後頭部を掴まれて…というかいつもよりこの行為が荒々しくて上手く息が出来ない。
酸欠で頭がぼーっとしてくる。


「ん、」
「っはぁ、は、苦し、って」


解放されると大きく息を吸った。


「どうだった?」
「…大人の味デシタ。でも、」


思ったより悪くなかったかも。
と思えたのは、たぶん…


「くせに、なりそうですね」
「だろうな」


ニヤリ、口の端を上げると全然甘くないそれを口に含んだ。






ノンシュガーの甘み



















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教師設定大好物です!

title by 確かに恋だった

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