ぎんたま
□一歩前進
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AM 8:27
人の少ない、というか殆ど居ない通学路をぼーっと歩く。
昨日の晩は、つい長電話をしてしまい就寝時間が遅くなってしまった。
まだ切りたくないと、普段口数の少ない彼女が言うもんだから、ね?
眠そうな声で話す彼女を思い出し顔がにやける。
「あれは反則だよなァ…」
一人でうんうん頷いていると、くい、と引っ張られる感覚。何かと振り向けば、昨晩の電話相手である愛しの彼女がカーディガンの裾を握っていた。
え、ちょ可愛いんですけど!
「…銀、おはよ」
「はよ。なまえも寝坊?」
「うん」
ギュッと抱き締めたい衝動に駆られるが、ぐっと堪えて冷静に…なれるかよ!
うん、て可愛すぎんだろ!
「…あ。なまえ、ここ」
「?」
跳ねてる、と髪を撫で付けると俯き気味に顔を反らした。
これはなまえが照れてる時にする仕草。
付き合いたての頃は、言葉が少なくて何を思ってるのか全然分からなかったけど、最近になって漸く分かるようになってきた。
例えば。
こうして触れている時に大人しく触らせておくのは、続けて欲しいとか、もっとして欲しいってことで。
つまり俺に触られるのも嫌じゃないってことになる。
癖も収まり、手を離した。
「よし、行くか」
「うん。…銀、あの」
「ん?」
「あー、と…昨日、ね」
手を引いて歩きだすと、ぽつりぽつりなまえが話しだした。
なまえが自分から話してくれるのは珍しいから、聞き逃さないようにしっかりと耳を傾けた。
昨日は友人と買い物に行き、お気に入りの店で洋服を買ったとか、新しく出来たクレープ屋さんが良かったとか。美味しかったから今度一緒に行こう、とか。
今日は何だか饒舌だ。
「でね、こないだ見てた、これ」
「え?」
はい、と手渡されたのは紙袋。中には小さい箱。シンプルなリボンでラッピングされている。
開けてみるとシルバーリングが箱に納まっている。
あー、ちょっと待てよ。
これってこないだ雑誌に載ってた…
「覚えてたの?」
「うん。…誕生日、おめでとう。それから、」
「大好き」
AM 8:39
初めて聞く言葉に顔が緩む。
それを悟られないよう、ぶっきらぼうに、んなこと知ってる、と伝え抱き締めた。
大人しく腕に収まっている彼女に愛しさが込み上げた。
…可愛すぎんだろ、反則。
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ハッピーバースデー銀さん!
好きって初めて言われた坂田氏。
不安で高杉に相談してウザがられてればいい^^
続くかも?
111010 久遠