ぎんたま
□きみの全てで暖めて
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ちょっと用事で遅くなるかもしれないから先に家入って待ってて。
昨日の夜、急用が出来たとかで坂田さんから電話があった。
了解です、と返事をしたは良いが、今、家の前まで来てあることに気づいた。
…鍵、持ってない。
「ダメじゃん…」
はぁ、と溜め息を吐くと玄関の横にしゃがみ込んだ。
外食よりも手料理が良いなんて言うから材料は買ってきたけれど、時間大丈夫かな…全部は作れないかもしれない。
昨日、リクエストを受けた料理をぼーっと思い浮かべた。
「…い、おい。なまえ!」
少し焦ったような声で名を呼ばれて目が覚める。
膝に埋めていた顔をゆっくり持ち上げると声色通りの表情をした坂田さんが目の前にしゃがみ込んでいた。
まだ完全に起き切れていない頭で、おかえりなさいと告げる。
「ただいま…ってそうじゃねーよ。お前なんでこんなとこで寝てんの?風邪引くだろ」
坂田さんは、外で寝るなんてどういう神経してんのこの子、ただでさえ最近は物騒で危ないのに、などとブツブツ言っている。
腕を引き私を立ち上がらせると中へ促した。
「ったくよォ」
「すみません。でも、来てから鍵が持ってないの気づいたんですよ」
「あれ、鍵渡してなかったっけ?」
「はい」
「あー、悪ィ。すっかり渡したもんだと…なまえ」
掴まれたままの腕を軽く惹かれ、壁と坂田さんの間に閉じ込められる。
す、と指で唇をなぞると口づけられた。
「すっかり冷えちまったな」
「坂田さん…」
「なまえ、せっかくだし一緒に風呂入ろっか」
「いやで、」
「はい決定ー」
嫌だと言ってもズルズルと腕を引かれ強引にお風呂場に押し込まれてしまった。
勿論、体を洗い温まるだけで終わるはずもなく、湯船の中で坂田さんに散々いじめられた。
お風呂の中での行為に逆上せてせまい既にクタクタだったが、全く萎える様子のない坂田さんにベッドでも嫌というほど責められ、起きた今もその行為のあとを引きずっている。
「力、入らない…」
「まァ、あんだけしたらそうなんだろ」
坂田さんの腕の中で呟くと、楽しそうな笑い声が頭上から降ってきた。
結局お風呂を出た後すぐに寝室へ連れられて行為が再開されたため、ご飯も作れずプレゼントも渡せず終いで…
「あっ、そう!プレゼント!坂田さん、プレゼントあるんです」
「いいよ、後で。もうちょいこのまま…」
「は、えっ?」
坂田さんは体を下にずらすと私の胸に顔をうずめた。
ふわふわの髪の毛が胸元にあたってくすぐったい。
「っ坂田さん、くすぐったい」
「んー?」
「ひ、あ…な、舐めないでください!」
肩を叩いて抗議すると左手に感じる違和感。
「さ、坂田さん、これ…」
「…まァ、予約ってとこだな」
左手薬指にはまる指輪。
シンプルなデザインで、小ぶりなダイヤモンドが一粒。朝の光を反射してキラキラ輝いている。
坂田さんは手の角度を傾け指輪に見入る私を悪戯の成功した子どものような目で見ている。
「うー…坂田さん」
「わぷっ、ちょ、何。苦しって、いやこれはこれで嬉しいけど!興奮するけど!」
苦しいとか嬉しいとか変な言葉も聞こえるが、構わずぎゅーっとふわふわの頭を抱きしめてお礼を言う。
ありがとう、大好き、と。
「どうしよう…」
「なまえ?」
「…幸せすぎて死んじゃいそう」
「へぇー。そ?」
こくりと頷くとたちまち笑顔になる坂田さんを見ていやな予感がした。
この笑顔は絶対厭らしいこと考えている。
「じゃあさ、俺のことも幸せにしてよ」
ほらきた。
あぁ、もう。今日は映画見に行こうって言ってたのに。
「もうっ…坂田さ、あっ…映画、行くって」
「終わったら行く?まぁ、なまえが動ければの話だけど」
「…あ、っひ、ぁ」
…今日は映画、行けそうにありません。
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メリークリスマス!
坂田さんは絶倫。
111224 久遠