ぎんたま

□ホワイトクリスマス
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バイトが終わり携帯を開くと新着メールが2件。

片方は大学の友達から飲み会の誘い、もう片方は恋人である高杉から。



"終わったら連絡しろ"



思わずにやけてしまう。

何せ普段は自ら連絡なんてしない高杉からのメールだ。

先週会った時、クリスマスイブはバイトだと嘆くと高杉は精々頑張れや、と笑っていたが、そのときなまえが小さく呟いた「クリスマスは一緒に過ごしたい」という言葉をどうやら覚えていたらしい。



「今終わったよ、っと」


メールを返信しバイトの制服から着替えていると携帯が震える。



"いつもの店"



「了解、と送信!」


急いで荷物を纏めると更衣室を出た。





"いつもの店"とは二人ががよく待ち合わせ場所にする喫茶店のことだ。

昼は喫茶店として、夜はお酒を飲むことができ、バーとして利用することができる。

そこのカウンター席に座り高杉はウイスキーを飲んでいた。


「高杉先生っ」
「騒ぐな」
「へへ、私も何か飲もうかな」
「おめぇは弱いんだからやめとけ」
「…晋ちゃんのけち」
「あ?誰が晋ちゃんだ」


拳で軽く小突くと高杉は席を立つ。

上着を腕に掛け鞄を持つ姿がかっこよく、なまえはその姿に見とれていた。

これだけ顔が整っていたら、見とれるなという方が難しいと思う。


「…何だ」
「どうしよ先生…鼻血出そう」
「クク、馬鹿言ってねーで行くぞ」
「はぁい」


先を歩く高杉に続きなまえも店を出る。

隣に並び高杉の顔をちらっと盗み見た。
それを高杉が気づかないはずがなく、何だという目で見つめ返す。


「…先生、手寒くない?」
「あァ、大丈夫だ」
「そうですか…」


どうしてだろう、気恥ずかしくて手が繋ぎたいって一言が言えないなんて。
あぁあああ…となまえは項垂れた。

そんな様子を隣で見ていた高杉は、正反対に楽し気な笑みを浮かべている。



二人が付き合い始めてもう少しで2年が経つ。

長い間一緒に過ごしてきた為なのか高杉にはなまえの思っていることが手に取るように分かってしまう。
元々分かりやすい性格だということもあるだろう。

いつもは素直で割となんでも器用にこなすが、色恋沙汰になるとそうはいかないらしく時折このような事がある。

そんななまえをわざと困らせて悩んでる姿を見るのが好きだと知ったら本人はきっと怒るだろう。



未だに項垂れているなまえはきっと雪が降ってきたことにも気づいてないはずだ。


仕方ない、といった感じで高杉がなまえに声をかけた。


「おい、なまえ」
「…え?何ですか、ちょっと今忙し」
「あ?手ェ貸せ。雪が降ってきて寒い」
「うそ、え?本当だ、雪降ってる…」


高杉がすっかり雪に気を取られていているなまえの手をしっかりと握る。

これまた驚いたような声を出しているが、知らない振りをして手を引いた。


「せ、先生!あのっ」
「折角だ、ケーキでも買ってくか」


普段はこんな事しない俺に頭を悩ませてればいい、と高杉は静かに笑みをこぼした。










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高杉じゃないよ、これ。
何か崩壊してる。
そしてクリスマスに間に合わず。

111226 久遠

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